大変でも患者の希望に寄り添う看護師

看護師からは、終末期を迎えた患者のケアが最も大変だという声がよく上がります。終末期の患者は体が弱っているだけでなく精神状態も不安定なため、意識レベルが一気に低下することが頻繁にあるからです。他患者をケアしているうちに容体が急変し、最後は何もできなかったというケースは医師や看護師にとって珍しくありません。

そのような現状があっても患者の終末期を少しでも豊かなものにするために、病院側は可能な限り努力しています。例えば、写真が趣味の患者が入院していたら、その患者が過去に撮った写真を病室に飾るのはよくある光景です。また、落語をしていた患者に、看護師が弟子に打診して病棟内で落語の発表会を実施した事例もあります。これは患者が終末期を迎えていても、これまでの人生で大切にしてきたものを身近に感じることで生きる力が得られることを、医師や看護師は十分に理解しているからです。

やりたいことがあっても院内では大変だからできないと諦めて口に出さないのは、終末期を迎えた患者にとってのあるあるでしょう。確かに現状では院内でできることは限られていますが、工夫すれば可能になることもたくさん存在します。口に出さない患者が望んでいることを察知するために、看護師同士が連携して情報収集するケースも多いです。あのときああしておけば良かったという後悔をたくさん経験しているからこそ、看護師は終末期を迎えた患者に接するときは細心の注意を払っています。